1804ノビルの絵
         (ノビルと手前味噌)
畑でノビルを採ってきました。栽培している訳ではなく自生しているのです。
ご近所の友人に持って行きましたら、ちょっと待ってと言われ、日本酒を頂きました。

知り合いの近江の酒造メーカーが、この時期限定で売り出すお酒で、名前が山笑うでした。ノビルひと掴みで銘酒が手に入ったことになり、山ではなく人笑うです。

山笑うとは言うまでもなく俳句の季語です。出典となった中国の臥遊録、春山淡冶にして笑うが如しから採られたそうです。因みに冬の描写は冬山惨淡として眠るが如しとありますから、一気に目覚めた春の山の様子を見事にとらえています。

山笑う頃は、山だけではなく畑も笑い、野草の新芽が盛んに出てきます。この日の収穫は、ノビルの他にタラノ木、コンフリ、ネギ坊主です。

上掲の絵はその時のノビルですが、絵を見る限りあまり美味そうではありません。しかし本物は手前味噌で食べると、その独特の苦み辛味はまさに春の味そのものです。

それ以外は天ぷらです。タラノ木は、普通の棘のある木とは別種のものなので芽ではなく、展開直前の赤ちゃんの手のひらほどの葉を食べます。

コンフリは食用として朝鮮半島から来たものらしいですが、どういう訳か畑に自生しています。ものの本によるとあまり沢山食べないほうがよいと記されています。連れ合いは警戒していますが、毎日食べるわけではないし、この時期だけのものですから遠慮なく食べることにしています。うぶ毛の生えたような新芽は味が濃く普通の山菜と一味違います。

今年の新顔はネギ坊主です。以前にも紹介しましたように我が畑ではネギは刈り取り収穫していますので、この時期にせっせと出てくるネギ坊主を刈り捨てていました。

ところが昨年ネギ坊主は天ぷらにすると美味しいと教わりました。教えてくれたのは近所の同年配の女性です。この人は子供の頃から畑仕事を手伝っていたそうです。
私がネギ坊主を捨てていると話をしたところ、勿体ない、天ぷらにすると美味しいので子供のころよく食べていたと教えてくれたのです。

今年はじめてそれを食しましたが、なかなかいけます。普通の山菜より味が深いかもしれません。

今夜のお酒のあては、ノビルの他これらの天ぷらと同じく畑のフキの煮物です。我が家ではフキは葉も使います。葉の苦みが格段に味の深みを増します。

香り高く、口当たりもよいのでご機嫌で飲むうちにいきなり酔いが回ってきました。
ラベルを見るとアルコール度数が18度とあります。まあ、大酒のみ仕様です。私のような下戸に近い人間には高すぎます。口当たりのよさに騙されて、文字とおり度を過ごしてしまい、やがて眠り込んでしまいました。

山笑うを頂いて人笑うとなり、そして最後は人眠るとなったわけです。臥遊録の表現を借りれば春山から冬山に逆戻りして、冬山惨淡として眠るが如しとなってしまったわけです。
今年は山笑う時期がむやみに早くて、農作業もあたふたしています。カボチャの種まきは早々とポットに種まきしました。例年畑にじか蒔きするのですが、気候がどう変わるか分からないので家でよく観察することにしました。人眠るなどと言っておれません。

とはいえ、この時期は眠いですねえ。
近年、なぜかホトトギスが鳴き始めるころまではひたすら眠いです。加齢とともに季節への順応力が落ちてきているせいでしょう。そして、最後は眠り続ける日が必ず来るわけですから、これは自然の理といえます。ガッテン!

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