三面川

早朝のラジオニュースを聞いて跳び起きました。直木賞の発表があり、青山文平氏がつまをめとらばで受賞したことを伝えていたのです。
つい先日、この本を読み終ったあと、なぜ彼が直木賞をとらないのだろうと家人に話していたばかりなので、ファンの一人としてわがことのように喜びました。
 
氏の作品に「かけおちる」という秀作があります。妻に駆け落ちされ、娘に駆け落ちされ、最後には自分自身がかけおちるという珍しい展開のストーリーですが、その中で種川という言葉を知りました。
鮭が産卵しやすいように川床を整える、あるいは新しい流れを作ることで、鮭の遡上を増やして地場産業を繁栄させる殖産の手法ですが、これは越後村上藩の三面川から伝えられたとのことです。
 
先年、瀬波温泉の夕日を愛でようと出かけたことがあります。ところが、瀬波よりも近くの村上の街並みや名産・名物に心惹かれました。
絵はこの時のもので、三面川に舫う川舟に旅情を感じてスケッチしたものです。三面川には不格好な護岸工事も見えず、ゆったりと流れていて立ち去りがたい雰囲気がありました。
 
後で知ったことですが、この舟は居繰網漁という伝統鮭漁に使う舟でした。
何気なく見ている風景も、古からの営みを継承している人々のことや、歴史的背景を知ると格段に深みが出ます。
青山文平氏は元来寡作な作家のようですが、氏のことですから種川の作事も万端整えて、これから続々と魅力的な作品を出されることでしょう。楽しみです。
               >>>毎月八の日(8,18,28日)発行予定<<<
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