(スイス・グァルダの雪追い祭り)
二月の中旬頃になるとボランティアグループでマリア祭を執り行うのが恒例となっています。
マリアとは言うまでもなくイエスを生んだ聖マリアのことですが、マリアの位置づけはキリスト教界でも神学的にやかましい解釈があります。きわめて大雑把にいえば、プロテスタントではやや冷淡ですが、カトリックではとても大事に扱われます。
マリアが中世以降、世界各地に顕現して病気治癒などの奇跡を行ったとされ、ルルドやファティマが代表的な場所となっています。私たちのボランティア活動を行っている修道院では十字架の道行きの途中にマリア像が設置されていますが、それはルルドのマリア像を模したものなので、2月11日の祝祭日前後に毎年お祝いをしています。今年は2/15です。
十字架の道行きなどと聞きなれない言葉が出てきましたので、それについても少し説明をします。イエスが反対勢力の策動によってそそのかされた民衆によって、時のローマ総督ピラトによって十字架上での死刑宣告をうけて最後を遂げたことはよく知られています。
この宣告から十字架上の死にいたるまでの一日を、14から15の出来事に分けて表し、それぞれを留と称します。例えば第1留:死刑宣告される、などです。
普通は教会の聖堂内部に、彫刻された木片などが配置され、それを巡りながらイエスの死を振り返りながら祈りを捧げます。十二所の修道院のように屋外に設置されるところもあります。
十字架の道行きとは、いってみれば月命日のお参りみたいなものです。広大な敷地の中を巡る道行きは、四季の自然を感じながら祈ることができるので、日本人の心情によくフィットして好評です。
因みにこの祈りは、信者でなくとも行えます。どんな雰囲気なのか興味のある方は下記ホームページをご覧になって下さい。
http://www.geocities.jp/zeng_5508/
もともとは、復活祭の前の四旬節といわれる頃(2~3月)に行うのが普通ですが、十二所では四季を通じてできるように、祈り文も「病者の回復を祈る」とか死者を悼む「追悼のための祈り」とかが用意されていますし、また祈り文なしで、各留で自由に黙想なり祈りを捧げて巡ることもできます。
前置きが長くなりました。マリア祭に戻りますと、当日マリア像や留を綺麗にして花などを飾ります。次に十字架の道行きを行い、その後マリア賛歌を歌い、マリア様への感謝の祈りを唱えながらマリア像の周りを巡ります。この時に気分を盛り上げるためにカウベルを振るのが十二所流です。
やっていながら、いつも思うのですが、これはスイスで行われるチャランダマーツと同じです。カリジェの絵本「ウルスリの鈴」をご覧になった方は子供たちがカウベルを鳴らしながら牛の水飲み場の周りを巡る場面を思い起こすでしょう。実は、上掲の絵はこの絵本を見て興味を持ち、わざわざスイスの小村グァルダまで見に行った時に描いたものです。
あれは、雪追い祭りですが、こちらは杉丸太で組んだ台座の上に安置されたマリア像の周りを同じように巡るのです。
そして、一連の行事が終わると囲炉裏を囲んでの昼食会です。仲間に料理の達人がいるので楽しみです。今年はブイヤベースらしいので、私は旨いパンを調達し、炭火で焼いて食べようかと思っています。
鎌倉の山あいにあるここの修道院には、野兎やタヌキが出没し農作物を荒らします。それで懲らしめのために捕獲して食ってやろうと思うのですが、そう簡単に捕まりません。落とし穴を作ろうとか、いやトラバサミがいいとか話し合っている最中です。
と、まあこんな愚にもつかない雑談をしながら食事をするわけです。ひょっとするとこの囲炉裏談議がマリア祭のメインイベントかもしれません。仏式でも最後は精進落としなどと称して飲み食いしますから、古今東西、人間のやることは似たようなものだということでしょうか。
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