とくに混浴を好むというわけではありませんが、いい温泉を探して出かけると混浴のところが多いです。
・酸ヶ湯温泉
1960年代のころです。友人と二人で春スキーに出かけて泊まりました。夕食を済ませてくつろいでいると、突然大声で女が入ったぞーと叫ぶ声がします。するとあちこちの部屋からバタバタと大勢が風呂に向かいます。私たちも釣られて列に加わりました。当時の大浴場は薄暗く、もうもうたる湯気のせいで誰が入っているのか見当もつきませんでした。
先年久しぶりに訪れたときは、別印象の湯になっていました。明るいうえに換気のせいか湯煙も少なく、何より男女別の時間帯も設けられていました。同行の女性は好奇心旺盛で、あえて混浴時間帯に入ってご満悦状態でした。世の中も変わったものです。
・五色温泉
高山温泉郷の中に五色温泉という腰痛にきく湯があり、友人二人と出かけました。
ここは松川渓谷沿いに細長い湯船があります。渓谷の紅葉を眺めるために湯船の先端に行ったのが失敗でした。途中から女性客がどやどやと入ってきました。大分長湯をしたので戻りたいのですが、女性客をかき分けないと戻れません。意を決して、手刀などを切りながら通らせてもらいましたが、こんな場合は数がものをいいます。相手方は元気いっぱいです。もう少し一緒にもみじ見物をしましょうよ、などとからかわれて参りました。
・法師温泉
客は浴槽に渡された竹の棒に頭を載せていい気分で浸かります。それはいいのですが、構造上全員が出入り口に向かっているので女性客は入りにくい。突然甲高い女性の声で「これから女性が入ります。男性方は向うを向いて」「さあ皆さん、一斉に入りましょう」と声がかかり老若女女が入ってきました。後で聞くとバスツアーの客で、時間の関係であゝいう仕儀になるのだそうです。それにしても元気がいいなあ。男性客はしょんぼり下を向いてやり過ごしました。
・万座温泉
露天風呂はすべて混浴というホテルがあります。スキーのあと日中一人で入っていたら若い男が入ってきました。しばらくしたら男が立ち上がり何かジェスチャーをしています。だれもいないと思いカップルで来たのに私がいたので女性を止めようとしていたらしいです。こちらが岩陰にいたので気づくのが遅くなり、それでかなり慌てていました。そのうち男が岩に足をとられたのか、アーッとか言いながら岩風呂の中に頭から飛び込んでしまいました。失礼ながら大声で笑いましたね。若い女性が仕切りから丁度入ってきて、あっけに取られてこの光景を眺めていました。
・夏油温泉
岩手にある期間限定の名湯でゲトウと読みます。川にそって数か所、湯が湧き出ているところに湯船が作られています。温泉は野菜と同じく鮮度が命といいます。その意味では新鮮そのものの湯です。
客のいない早朝にスケッチしたのが上掲の絵ですが、スケッチの終わりに岩陰から女性が立ち上がったので驚きました。髪の長いうら若い美人です。後姿しか見ていないので断言できませんが、スラリとしたかなりの美女です。急いで頭だけを絵に描き加えました。
朝食後に大湯に入り、客同士で話をしているうちに、この辺りに自生する珍しい花が話題になりました。ぜひ見たいといったら客の一人のおばさんがその花ならこの川の下流に咲いている、案内してあげると言うではありませんか。行きがかり上おばさんに手を引かれて花を見に行きましたが妙な気分でした。何しろ二人とも全裸です。おばさんが指さして、あれがそうだと言うのですが、はあ、はあ、とうなずきはするものの何を見たか全然覚えていません。ホウホウのていで戻りました。いうまでもなく二人の間は単なるフロトモで以降何の進展もありませんでした。しかし、これが早朝の美女だったらどうだったでしょうか。何かときめくものを感じますが今は昔の夢です。
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